FEATURE
Daryl Wilsonが率いる新生Wilson Audioのフラッグシップモデル
Wilson Audioの創設者であり長年にわたり製品開発を率いてきたDavid Wilsonからバトンを受け継いだ後継者、Daryl Wilsonが満を持して世に問うフラッグシップモデルが、このChronosonic XVXです。
父David Wilsonが彼の人生の集大成とも言える特別なモデルWAMM Master Chronosonicの開発に専念していた、ここ5年あまりの間に、DarylはALEXX, ALEXIA2, Tune TotそしてSASHA DAWといった現在の主力モデルを開発。どのモデルとも世界中のマーケットで熱狂的に受け入れられ、Daryl率いる新たなWilson Audioはハイエンド・オーディオの世界で再び大きな脚光を浴びました。その彼が新たなWilson Audioの未来への道を示すべく、フラッグシップモデルの開発に着手したことはいわば自然な流れと言えるでしょう。
父Davidが彼の人生の最後に完成させたWAMM Master Chronosonicが今までのテクノロジーの集大成であることに対して、Darylが完成させたChronosonic XVXはこれからのWilson Audioのテクノロジーを予見するものであることが、まさにDarylがこのモデルを創造した意義と言えます。
まったく新しいAlnico(アルニコ)マグネット採用ミッドレンジドライバー
QuadraMag Midrange
David Wilsonはアルニコマグネットを使用したドライバーユニットの自然で美しい音に惹かれて、長年にわたり現代的なWilson Audioのスピーカーに搭載することのできるアルニコマグネットドライバーの研究開発を続けていました。この研究開発をDarylが引き継ぎ、4個のアルニコマグネットを直交配置した革新的な磁気回路をもつミッドレンジを完成させました。アルニコマグネットでありながら現代スピーカーに求められる十分な磁束密度を持つこのQuadraMagMidrangeはアルニコ独特の暖かさとナチュラルな音色を持ち低ディストーションと超高分解能を実現しています。
MTMM Upper Arrayコンフィグレーション
Wilson Audio独自のミッドレンジ=ツイーター配置
Wilson Audioの大型フロアスピーカーシステムは伝統的にMTM(ミッドレンジ、ツイーター、ミッドレンジ)配列構成を採用していますが、今回Chronosonic XVXのアッパーアレイは、4つのドライバーのMTMM(ミッドレンジ、ツイーター、ミッドレンジ、ミッドレンジ)という配列構成としています。
先に紹介したQuadraMag Midrangeがミッド帯域の低域側を受け持つLower Midrangeとしてアレイの最上段と最下段に配置され、下から2段目にはWAMM Master Chronosonicのために開発された4 inchドライバーをミッド帯域の高域側を受け持つUpper Midrangeとして搭載。上から2段目にはWilson Audioの最新型ソフトドームツイーター、Convergent Synergy MK5ドライバーが搭載されています。
XVXのアッパーアレイは、Wilson Audioが誇る超高剛性素材、X-Materialと超ハイグレードアルミニウムで作られたオープンなガントリー構造で成り立っています。ガントリー構造の第一の機能は、高精度のタイムドメインをより精密に行うための揺るぎないリジッドな構造を実現することです。設計チームは三角形上のクロスブレイシング構造とX-Materialを戦略的に使用することにより剛性とダンピング(減衰)性を両立させることに特別な注意を払いました。
AudioCap X
Wilson Audioの手により設計・生産されたクロスオーバー用コンデンサ
Wilson Audioにはクロスオーバー回路のクオリティコントロールと品質向上のために、また業界トップクラスのクロスオーバー回路の一貫性をさらに高めるために、近年より自社でコンデンサ設計と生産を行っています。Wilson Audioのクロスオーバーは最高のコンポーネント、細心の製造とテストによりウルトラタイトな精度で長年業界トップの地位を保ってきました。自社コンデンサ部門を立ち上げてからは、最高峰の革新的コンデンサーテクノロジーと実証的(音楽中心の)開発を行っていますが、Chronosonic XVXのクロスオーバーでは全く新しいAudio CapX-WA(特定用途向け、Audio CapXの特注バージョン)を初めて使っています。
Audio CapX-WAコンデンサは当社の優れたハーモニックと低いノイズフロアをさらに進化させ、Wilsonクロスオーバーの精度をさらに高めるための方法を用意にしました。
コンポジット材による強固なエンクロージャー
Wilson Audioは、長年にわたり最新コンポジットの研究開発を続けてきました。アルミ合金であれ、特殊なウッドであれ、最先端のコンポジットであれ、同じ素材を使い続ける設計者がほとんどですが、Wilson Audioはエンクロージャー専用の様々な素材の理念を目指して弛まぬ研究開発を続けています。音楽的精度を向上させ、スピーカーパフォーマンスの既成概念を打ち破る素材研究は、Wilson Audioにとってのゴールではありません。Darylと彼の設計チームは、Laser Doppler Vibrometryシステムなど最先端開発ツールと最先端の測定技術を使用することによって、従来の方法では検知できない音楽に有害な振動をも測定することができるようになりました。Chronosonic XVXのキャビネットと各モジュールには特許技術X-Material とS-Materialのコンポジットと航空機グレードアルミニウムを使っていますが、材料技術にはまだまだ発展の余地があります。Darylと彼のチームは現在もコンポジット材の改良に取り組んでいます。
カーボンファイバー製クロスオーバーハウジング
クロスオーバーハウジングは新たにカーボンファイバー製といたしました。これにWilson Audioの設計による新しい接続スペードがシステムに加わりました。Sasha DAWのために開発されたクイックリリース(着脱が容易な)タイムドメイン調整ボルトがXVXでも使用されています。チューニング用の保護レジスタはリアキャビネットのアクセスしやすい部分に配置され、それぞれカーボンファイバー基板に取り付けられています。レジスタ交換は、クイックリリースガラスカバーをはずし、ヒートシンクからハードウェアを外すだけで簡単に行うことが可能です。
Chronosonic XVXマイクロメーター
先代、David WilsonがWAMM Master Chronosonicの開発で最も時間と労力を要したのは、各モジュール間の超精密なタイムドメイン調整でした。1年以上の苦労の末、WAMM Master Chronosonicに搭載したMicrometerシステムが完成しました。これはアレイの各部が正確な動きができるようにするメカニズムです。WAMMと同様にXVXでも、より容易にシンプルに200万分の1秒以内の単位で調整できるタイムドメイン精度という理論上のアプローチ実現を目標としていました。その結果、これまでにない正確な調整機能を持つアレイを実現いたしました。Daryl率いる設計チームはアッパーアレイにMicrometerを2個組み込みました。1つは最上部のQuadraMagミッドレンジとConver-gent Synergyツイーター用、もう一つは下側のQuadraMagと4 inchミッドレンジ用です。さらに各モジュールのアレイ内での相対的位置は調整可能です。Chronosonic XVXのタイムドメイン精度の中核となるこの複雑なメカニズムにより、ほぼどんなサウンドルームやリスニング形態でもスピーカーを最適化することが可能です。ほぼ全ての部屋においてドライバー間偏向500万分の1秒以下というXVXのタイムドメイン精度に匹敵するのはWAMM Master Chronosonicだけです。このスピーカーが素晴らしい音楽を奏でるという結果がなければ、テクノロジーはただの空虚な理論にすぎなかったでしょう。トランジェントのスピード、ダイナミック、ハーモニックな表現、空間的分解能、マイクロディテール、バックグラウンドの静寂性などは全てXVXのタイムドメイン精度の産物です。
Chronosonic XVXには、Wilson Audioの最新型ツイーターConvergent Synergy MK5が2つ搭載されています。1つはスピーカーの正面に搭載され、新しいQuadraMagミッドレンジとシームレスつながりを持つアッパーアレイを構成しています。 もう一つはアッパーアレイの頭頂部に少し後ろ向きに取り付けられた後方放射用ツイーターです。後方放射用ツイーターは0dBからマイナス37dBまでの調整幅を持っており、設置環境に応じた調整は可能となっています。
10 inch&12 inch
ダブルウーファーシステム
Chronosonic XVXと同じグレードの前作にAlexandria XLFというモデルがありましたが、そのモデルのウーファー口径は13 inch&15 inchと、Chronosonicよりも一回り以上大きい口径を採用していました。Chronosonic XVXでは敢えて口径を抑えることにより振動系を軽量化、さらにエンクロージャー内容積と振動板面積の比率を最適化することにより、軽く深いベースサウンドを実現しています。
Cross-Load Flow Port
David Wilsonが考案したCross-Load Flow Portはバスレフポートの位置をフロント側かリア側で選択できる、シンプルではありますが効果の大きい方式です。スピーカーの設置環境の違いにより低音の量感は大きく影響を受けますが、このCross-Load Flow Portにより設置条件による低音への影響を最小限としています。